2015年9月15日火曜日

作ることについて考えていること

ネットプリントをやり始めてから、よく訊かれることと、それに対して考えていることを書く。

まず、そもそもネットプリントとはなんぞやということについて。私がいつも使っているのは富士ゼロックスが提供しているサービスで、文書を登録するとその日から1週間、セブンイレブンのプリンターから出力できるというもの。出力するのにモノクロ20円、カラー60円の費用がかかる。これは純然たるプリント代で、文書を登録した人間には入らない。
本来はサラリーマンが出張先などで必要な文書を印刷するために生み出されたものなのと思うが、現在ではクリエイターの卵が自分の作品を全国に頒布するために使う割とスタンダードな手段になっている。これはおもしろいということで私が始めたのが、いま月一で発行しているネットプリント『生存の心得』である。

ネットプリントを選んだのにはいくつか理由がある。
1つは、新しい読者層を開拓できるから。ツイッターで「ネットプリント発行します」と書けば検索ワードに引っかかるし、ネットプリントを専門にリツイートするアカウントに宣伝してもらえる。

2つ目に、頒布の手間が省けるというのがある。作品を人に見てもらう状態にするには、書く以外の作業が色々発生してくる。例えばイベント参加の為の事務手続き、表紙や背景のデザインやレイアウト、印刷屋との調整など、やらなければいけないことは山ほどある。こういう本質的でない作業はなるべく減らしたいと考えると、文書を登録だけして後は相手が出力するというネットプリントはとても効率的だ。さらにセブンイレブンから印刷できるので、自分から出向くことなく全国の人に読んでもらえる可能性もある。

3つ目は、発行期間が限定されていて、なおかつわざわざコンビニへ行き、プリント代を支払う必要があるということ。一見デメリットのようだけど、私はここに大きな意味があると思っている。
ただ書いたものを沢山の人に読んで欲しいなら、こうしてこのブログに載せればいい話で、ネットプリントよりずっと簡単だ。それなのに敢えてネットプリントを使うのは、私の書いたものに対してお金と手間をかけてもいいという人がどれくらいいるのか知りたいから。そして、そう思ってくれる人を増やしたいからだ。いずれ自分の作品で生計を立てたいと考えている人間にとって、この層をいかに増やすかというのはとても重要な課題なのだ。だから、例えプリント代が自分の懐に入らないとしても、コンビニに行ってお金を出してもらうということ自体に意味がある。

友達からは時々「データで欲しい」とか「お金払うからプリントしたやつ持ってきて」とか言われることがある。それをするのは簡単なのだけど、上に書いたような「ネットプリントをやる理由」に対して本末転倒になってしまうので私はやりたくない。というか、やらないことに決めた。
こういう風に書くと「偉そうだ」とか「それなら読まなくていいや」と思う人もいるだろうし、それは仕方のないことだと思う。が、私としては「それでも読みたい」と言ってくれる人を増やすのが目的なので、そうでない人に対しては今のところ必要以上の働きかけをするつもりはない。

色々書いてきたが、私が特別高尚なことを考えている訳ではなくて、たぶん自分の作品で稼いで行きたいと考えて継続的に活動している人は誰しも同じような考えに行き着くのではないかと思う。
想像してほしいのは、何気なく手に取った作品の裏には必ず手間と時間と時にはお金がかかっていて、それは作っている側が必死に捻出したエネルギーなのだということ。作る側は、遊びや道楽でやっている訳ではない。つまらない下らないと感じたならそれは作品に魅力がなかっただけのことだ。だけど面白いと思ったなら、受け取るときにも誠意を持ってもらえると本当にありがたい。なので、私のことに限らず、好きなクリエイターとか応援したい作家がいて、その人の次の作品を見たいと思うのであれば、受け取る側からも多少の手間を惜しまないでほしい。それが作る側を支えることになる。

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